• ヘアスタイル

【連載】私の毒を吸うとくれ vol.1/石原かおり

 美容室にまつわるあれやこれ。40代♀がお客目線で本音を暴露。

illustration_Tomomi Kazumoto

別件とはなんぞ?

 私はコンプレックスの塊で、程よく偏見を持つ中年女である。年を取ってからなのか、元々の性質なのか、起きた事象に対して分析しては、悲しい解釈をすることもある。

 私は月に1回ペースぐらいで東京へ行く。そのタイミングに合わせて気になっていたり、行きたいと思っている美容室の予約を入れる。絶対にそこに行きたいので出張の日程が決まるとまず美容室の予約を入れるくらいだ。

 今回も1ヵ月近く前に入れた予約だった。 私は美容室へ行くのが大好きだ。趣味と言ってもいいかもしれない。そして、美容師さんが大好きだ。なにせカッコイイ。練習を重ねて技術者となり、移り変わるトレンドやデザインを研究し、センスを磨いてお客に向かう。

 頭の中でデザインと技術を計算しながらにこやかに客と会話をする。 難しい暗号のようなカラー指示を出すとき、鏡越しにデザインをチェックする姿、シザーズケースを携えたたたずまい、外見も見えない部分も、どこをとってもカッコイイのである。

 そして、表舞台(サロン)のカッコよさだけでなく、私の仕事柄、勉強会や練習など裏の姿を見ているからこそ、よりそのカッコよさが増しているんだと思う。

 と言うわけで、自分のヘアスタイルが変わる、気持ちがいい、以外の楽しみもプラスされているので、もはや美容室は私にとって、厳しい現世を生き抜くために必要不可欠な癒やしとトキメキを与えてくれる場所。月に1度の美容室体験をそれはそれは楽しみにしている。

 先日、ショックでほうれい線が深くなるような思いをした。予約の前日、何度も知らない番号からの着信があった。いたずらにしてはしつこいので、頼んだ通販か何かのお店からの連絡かと思い、折り返してみた。

「美容室○○です。明日のご予約、別件が入りまして日程を変更させていただけませんでしょうか?」 (!!ええー!!明日の予約のことを今言うのー?) とも思ったがいや、そこじゃない。「別件」って? 1ヵ月前からの予約をぶっちぎるまでの別件って?

 予約サイトから予約したのでメッセージボックスも確認してみた。送られていた文章も明らかにおかしい。何がおかしいかというと、 「明日のご予約の確認で連絡いたしました」 とだけ書かれていたのである。ちなみにその後に予約の変更があった場合の注意を促す文章が入っていて、※印までして、予約変更に関する自社のルールが書き連ねてある。

 お客側のルールにはこんなにこうるさくて、自分側はノールールなのか? とまた私のほうれい線が何ミリか深くなったように感じた。

(ここからは妄想↓) 有名店だから芸能人の撮影とか入っちゃったかな? 芸能人が 「私この日じゃないとー」とか言って 「もちろん! なんとかちゃんのためなら調整するよ!」なんて受けちゃった? 「どーせ広島からの新規だからリピートしないし、いっか」とか。 そして、レセプションの子に、 レセプション「どう言って断りましょうか」 スタイリスト「別件とかでいいんじゃない?」 だったんか??って(あくまで想像)そして挙句の定例文挿入メール。

 すごく悲しい気持ちになった。せめて、バレないウソをついてほしかった。 「体調不良で休んでいる」とか、「親族の不幸があった」とか。のっぴきならないやつ。 「あー、それなら仕方ないね」ってやつで。全てに思いやりがなさすぎじゃろ。

 以前から行ってみたいと思っており、行く前まで、いい印象しかなかったのでとてもがっかりした。たぶん、もう予約を入れることはないと思う。短絡的かつ短気な思考かもしれないが、仕方ない。それが私なのだ。

 確かにあちこち行ってみたいからリピートしないことの方が多いかもしれない。けれど、私は仕事で行っているのではない、1人のお客として行っている。だから、この人にまたやってもらいたい! と思えばリピートもする。

 広島から県外の美容室を予約する際、いつも気にすることがある。
「わ、リピートしない新規だ」 「一生懸命やってもどうせこっちに住んでないんだから」 って思われないようにしなきゃ、という気苦労。
「東京へはどれくらいの頻度でいらっしゃるんですか?」なんて聞かれた日には 「結構、頻繁に! 月に一回は!」と若干声を大きめに、聞こえやすいように言ったりすることも。

 考えすぎかもしれないが、意外とお客は気を遣っていて、嫌われないように振る舞うもののような気がしている。ある程度、年を取った女というものは若い子からしたら緊張する存在かもしれない。気を遣う、やっかいな存在なのかもしれない。

 けれど、年齢関係なく、若い子もそうであるように、ひとくくりにはできないのである。人それぞれであり、「そんな人もいるよね」なのである。

 何が言いたかったかというと、相手が大人だろうがそうでなかろうが、相手の立場に立って行動すればそうそう間違えないということ。思いやりだって伝わるっちゅーこと。

※本記事は、『美容の経営プラン』2017年12月号にて掲載した記事を転載したものです。

2018.04.11
石原かおり
石原かおり

いしはら・かおり/(株)ハッピーリレイションズ代表。(株)リクルートにて美容室への提案営業を行ない、新規開拓のほか、毎月100サロン以上を担当。情報誌編集長兼ゼネラルマネージャー等を経て、2010年に独立。広島県を拠点に、美容室に特化したオーダーメイド型コンサルとして、各サロンの実情に応じた総合的かつ根本的な改革をフォローする。

share
【連載企画Vol.3】伸びしろは、ここにある!デザイ...

【連載企画Vol.3】伸びしろは、ここにある!デザイ...

町のお客さまを開拓し、さらなる支持を受けるカギを巧みなデザインカラー提案に見出した全国各地の美容師に突撃取材...

圧倒的な結果で集客できる発毛ケア。日本で唯一の発毛サ...

圧倒的な結果で集客できる発毛ケア。日本で唯一の発毛サ...

モナリの独自の哲学に基づき研究開発された商材。発毛の結果に確実に導くためのヘアケアアイテムを活用。愛知県豊橋...

【Part 1】「SUBLIMIC(サブリミック)」...

【Part 1】「SUBLIMIC(サブリミック)」...

2023年10月23~24日、サブリミックを経営や教育に活用している「エリアKOL」(※)の代表者が、東京都...

【美容室のブランディングに活用!】サロンオリジナルオ...

【美容室のブランディングに活用!】サロンオリジナルオ...

『オイルスタジオ』は、好きな香り・質感・パッケージ・オリジナルラベルを選んで、サロン独自のヘアオイルを制作、...

サロン経営課題の解決に導く「SUBLIMIC(サブリ...

サロン経営課題の解決に導く「SUBLIMIC(サブリ...

サブリミックとは、スタッフもお客さまも仕上がりの違いを即実感できるヘア&スカルプケアブランドであり、「スタッ...

大人のブリーチ毛の髪質改善&縮毛矯正を大解剖!「最難...

大人のブリーチ毛の髪質改善&縮毛矯正を大解剖!「最難...

年を重ねるごとに弱り、ダメージに対する耐性が低減していく大人世代の髪においては、ブリーチをしたら、髪質改善や...

<成功サロン事例>高単価メニューと高利益率の店販品で...

<成功サロン事例>高単価メニューと高利益率の店販品で...

一度体験したらリピートしたくなるサロンケアと、使い続ける理由があるホームケアで、サロンケア比率50%、店販購...

ヘアカラーに新たな価値を!ヘアカラー施術の質と持続力...

ヘアカラーに新たな価値を!ヘアカラー施術の質と持続力...

ありそうでなかった、「ヘアカラー剤のコーム型浸透促進器」。従来の施術に取り入れるだけで今までにない付加価値を...

<成功サロン事例>集客につながる!「サブリミック」の...

<成功サロン事例>集客につながる!「サブリミック」の...

サロンケアによる顧客満足度上昇や単価アップだけでない、「サブリミック」が新規集客にも効果的な理由について、導...

【連載企画Vol.4】伸びしろは、ここにある!デザイ...

【連載企画Vol.4】伸びしろは、ここにある!デザイ...

町のお客さまを開拓し、さらなる支持を受けるカギを巧みなデザインカラー提案に見出した全国各地の美容師に突撃取材...

水に驚異の洗浄力をもたらす注目のナノバブル発生装置『...

水に驚異の洗浄力をもたらす注目のナノバブル発生装置『...

dakotaが求める「サロンの価値」をかなえる上で、必然だった『marbb(マーブ)』との出会い。小谷英智香...

自分の髪が好きになる新発想の髪質改善トリートメント「...

自分の髪が好きになる新発想の髪質改善トリートメント「...

ストレートでも酸熱トリートメントでもなく、システムトリートメントでもない、新発想の髪質改善トリートメント「ヒ...

《小さなサロンの働き方改革》労働時間を短縮する!

《小さなサロンの働き方改革》労働時間を短縮する!

「美容師は長時間労働が当たり前」は過去の話。スタッフの労働環境改善を最優先に、営業時間を短縮。それでいて売上...

小さなサロンのアレルギー対応術

小さなサロンのアレルギー対応術

「白髪を染めたいけれど、アレルギーがあるから染められない・・・」そんなお客さまの声に耳を傾けると、小さなサロ...

magazine

pagetop